※この記事は「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song 」のネタバレを含みます。
ようこそのお運び誠にありがとうございます。
鈴木さんでございます。
Fateという物語に最初に出会ったのは忘れもしない2004年1月。そう、TYPE-MOON初の商業作品である「Fate/stay night」の発売日でした。
その数年前、友人から「鈴木さんが好きそうなゲームがあるんですよ」と渡されたのが「月姫」。渡された時は同人でゲーム作るなんて知らなかったから驚いたし、いくら面白いって言ってもエロゲでしょ? って思ってたんですよね。
でもやってみたら面白い!
個人の活動、いわゆる同人でこんなものが出来るのか! っていう驚きと小説とかには無い新鮮さを感じて、同じ同人ゲームの「ひぐらしのなく頃に」や泣きゲーと呼ばれるkey系のKanon等までやり始めて行くんだけど、この「Fate/stay night」ほどハマったのは無いし、ある意味衝撃だったんですよ。
そして全部で3つあるルートのメインであるセイバールート「Fate」アニメ化。2つ目の凛ルート「Unlimited Blade Works(UWP) 劇場版、TVシリーズを経て、今回の劇場版桜ルート「Heaven’s_Feel」三部作で原作である「Fate/stay night」は終わりを迎える訳なんですけど――。
いやー、まさかの桜ルートのアニメ化でしたね。
桜ルートって言ったらアレですよ。セイバールート、凛ルートではあまり無かったエロ要素を一身に引き受けてた【エロ担当】。
それが桜ルートだったので、アニメ化が発表された時はびっくりでしました。
まあ、エロって言ってもそんなでもないというかグロい感じでしたけど。
むしろ人間の汚い部分であるエゴやドロドロした部分を描いた理想や夢物語とはかけ離れたストーリーだし、奈須きのこさんが過去に書いてきた「月姫」や「空の境界」の世界観を知らないとすんなり入ってこない部分や、その世界観を踏まえてFate/stay night」自体の見えない謎や設定が明かされる観てる(読んでる)側にも覚悟がいるようなストーリーなので、映像化は難しいかな? なんて正直思ってました。
で、肝心の今作ですが、一言で言うと思った通り解りにくい。
いや、私みたいにFate好きでずっと見てきた人間からすれば、、見所も充分あったし「あー、終わったね。よかったよかった」って感じでなんだけど、初めて観る方はこの「HF3」だけじゃ確実に解らないし、Heaven’s_Feel三部作全部を観ても厳しい感じがしました。
確実に「セイバールートや凛ルート観てんだろお前ら!」前提で作られてます。
なので他の2つのルートを観ていないと「Heaven’s_Feel」の良さはわかんないと思うんですよ。
もちろん「Fate/Grand Order(FGO)」から入った方や多くのFateスピンオフというかif作品から入り、staynightは初見という方も「Heaven’s_Feel」劇場1作目から観たら解りづらい。友人や恋人に連れられて初めてこのHF3を観にきましたなんて感じだったら、ただでさえ難解な奈須きのこさんの世界観にポカーンとなるの間違い無しです。
映画観に行って感想で揉めて破局するとかマジでありますから!(経験者)
じゃあどう観ればいいの?
「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」は信念を曲げてでも愛する女性の為に生きると決意した男の物語
前作「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」 Ⅱ.lost butterfly」で主人公である衛宮士郎は多くの人々に危害を加える事になるであろう「この世のすべての悪」であるアンリマユと融合したヒロイン間桐桜を思い「俺は桜だけの正義の味方になる」と決意します。
子供の頃から思い描いていた「正義の味方になる」と言う信念を曲げ、愛する女性を救うと決める士郎。何かを得る為には、何かを犠牲にしないといけない場合って生きていれば絶対あります。
でも信念を曲げると言うのは相当な決意です 。
他の二つのルートで衛宮士郎が取ってきた行動を否定する様なラストを迎えた前作。
今作では空虚な理想を追い求めてきた衛宮士郎の解放の物語でもあります。
「Fate/stay night」“Fate”(セイバールート)で史朗は、養父である「衛宮切嗣」の想いも継ぐように「正義の味方になる」という強い思いを持っている姿が描かれます。
そして真面目で面倒見がよく、誠実に生きているのも伝わってきます。
しかし、その「正義の味方」になるという思いを貫いた故、結果的に自分の理想に裏切られた衛宮士郎は英霊となり、自分自身を「殺す」という目的を持って冬樹の地で行われた第五次聖杯戦争の地に現れます。
そして史朗はアーチャーの正体を知り、理由をも知るのですが、挫けてしまった自分自身と戦い、アーチャーに「己の描いていた信念」を思い出させるというのが「Unlimited Blade Works(凛ルート)」なのです。
そこまでして貫いている強い信念なんですね。
それを変えるというのは相当な事なんです。
それこそがこの「Heaven’s Feel」という作品の肝なんじゃないかと私は思うのです。
だから、その部分に焦点を当てて見て欲しいと思うんです。
終わりに
stay nightとFGOは別物と考えてるので、TYPE-MOON商業化から始まった「Fate/stay night」は、とち狂ってファンディスクである「hollow」をアニメ化しない限りはこれで終わりです。
そう考えると寂しい気もします。
そして、この「 [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song」で一番印象に残ったシーン。
「この世の全ての悪」に囚われ、桜のサーバントとなってしまったセイバーと戦った史朗が、組み伏せたセイバーの胸にアゾット剣を突き刺し、トドメを刺そうとする瞬間、我に帰ったセイバーが、本当に何も知らない様に、目の前にいる士郎に「どうしたの?」と、語りかける様に「シロウ?」とポツリと漏らすんです。
PC版Fateルートでハマって、桜ルートで解ってるけどその選択肢を選べずにバッドエンドになった身としては、この演出と川澄綾子さんの芝居だけで満足です。
そのセリフを聞いた瞬間、頭の中にゲーム版を夢中になってやっていた頃や、アニメ化(スタジオディーン版)決定で喜んだ当時や、映画かやらなんやらいろんな思いや感情、シーンがフラッシュバックしながらバーっと頭の中を駆け巡って、これが走馬灯か??? って思うレベルでした。
これは声無しのPC版では解らなかった。アニメ化の妙であり、こういうシーンがあるからこそですね。※PS2版もPSP版もやってないのです
でも三部作通して見ると、ただでさえ解りにくい奈須きのこ氏の世界観がネックになって、他のルートを知ってないと解りにくい部分が多いです。
繰り返しになりますが、一作目なんか他のルート見た前提で序盤が大幅にカットされていますしね。
そこは時間の制約や繰り返し同じ進行を見ないといけないファンに配慮した部分もあるのでなんとも言えないですが、単体作品(三部作)と見ると解りにくいかなと思いました。
っていうか、「Fate」3ルートの中でも、 [Heaven’s Feel]は、一番長いシナリオですし、人間関係も複雑なので、TVシリーズ2クールやった「Unlimited Blade Works」の尺でも足りなそうなのに、劇場3部作では描き切れないのは当然なだと思うんです……。
しかしPCゲーム版の時はエロ担当という意味で「桜かわいそう」って言ってた思い出があるんだけど、今となっては悲劇という意味合いに変わってるのが時代の変化なのかなと思ったり(笑)
月姫からの流れで追いかけてた自分としてFate/stay night集大成という意味でとても楽しめましたし、セイバーの最後のシーンでの川澄綾子さんのお芝居で「この作品見続けていて良かった!」と、幸せな気持ちでいっぱいです。
制作に関わった全ての方に感謝を込めて。