これは新条アカネの物語 。SSSS,GRIDMAN

©「GRIDMAN」製作委員会

ストーリー

物憂げな表情で屋上の鉄柵にもたれる少女が5つに別れる光を見る。その頃、記憶を亡くした少年、響裕太は同級生、宝田六花の家で目覚める。
屋上の少女、新条アカネは怪獣を造り、街を破壊していく。裕太は六花の家の古いパソコンの中に現れたグリッドマンと合体して怪獣と戦う。裕太と六花、内海は戦いに巻き込まれていく。

そんなおはなし。

新条アカネの物語

監督から「内容出し過ぎ」って怒られたという、オーイシマサヨシさんとTom-H@ckさんの「OxT」が歌う『UNION」の歌詞「君を“退屈“から救いの来たんだ!」の印象から、この物語は「グリッドマン=響裕太」を中心とした「グリッドマン同盟」が主軸だと思いがちですが、第2話のOP最後でハッキリするんだけど、これは新条アカネの物語なんだよね。
彼女に感情移入出来るかどうかで結構印象変わるんですよ。
でも、ヒーローものって「正義VS悪」ってバイアスがどうしても働いちゃうから、どうしてもグリッドマン側で見ちゃう。
だからまず一周目は素直に『グリッドマン同盟』側から楽しんで欲しい。
そして二周目は『新条アカネ』の心の葛藤を中心に見て欲しいです。

このアニメが放送されてた時とか「新条アカネはサイコパス」とか、(CVの)上田麗奈さんは狂った役やると上手い」みたいなの結構言われてたけど、前述の設定を解った上で観ると、サイコパスでもなんでもない、普通の女の子がゲームやってはしゃいでるようにしか聞こえないんですよ。

そもそも最近はなんでもサイコパスって言われちゃうけど。

劇中で怪獣少女、2代目アノシラスが響裕太に『新条アカネは神様だ』と告げ、『新条アカネは怪獣を使って街を壊して街を治す。何度もそれを繰り返してきた』と告げるシーンがありますが、その時の映像がまるっきり『シムシティ』なんですね。
そういえば、シムシティにも怪獣出てきて街を破壊してたなー。
シムシティと違うのは街にNPCがいて、そのNPCが自我を持って生活して、『ツツジ台』という街になってるところ。

だから新条アカネはゲームを何回も繰り返し遊んで楽しんでる女の子でしかないんですよ。そう踏まえて次のセリフをもう一度聞いてみて下さい。

第2話「修・複」の1シーン。モニター画面のアレクシス・ケリブに向かって、「ウチの担任、殺そうかって思ってー」から「じゃあ、よろしくぅ」のくだりや、怪獣が担任に向けて出した光線を見て、「ちょっと雑過ぎィ、ちゃんと狙って撃ってよォ」って笑いながら言うセリフが、普通の女の子が友だちと通話しながらゲームしてる口調にしか聞こえないんですよ。それもホント自然に。
他にもグリッドマン同盟の目線で見てた時にはサイコパスっぽく感じるセリフが、ほぼ同じく楽しそうに遊ぶ少女のそれに聞こえてきます。

そして、その目線で見ていると、中盤からラストへ向けてどうにもならくなって追い込まれていく新条アカネの心の葛藤が痛い程に突き刺さって来るんですよね。もう辛くて見てられない。

これがこの作品の一番の見どころなんです。

他の世界から来たグリッドマンが、新条アカネの心の一部である響裕太らと協力してアカネの心を救う。そしてアカネが現実世界で強く生きていこうと決心する物語。それが『SSSS.GRIDMAN』のおはなし。

EDで内田真礼さんが歌う「youthful beautiful」に合わせて流れる映像と、ラストシーンで六花と別れるアカネの姿を見れば、アカネが現実世界でどう暮らしていて、ツツジ台という世界の神にまでなって自分の理想を具現化しようと思ったのも理解出来ます。ラストシーンで六花に向かって言うように、現実のアカネはとても弱くて孤独な女の子。でももう大丈夫。現実世界に戻ったアカネは「なにもない」少女じゃない。きっと理想の自分になれるでしょう。

さあ、そういうところも頭に入れて、もう一度見返してみませんか?
色々と新しい発見があるかもしれません。

自分はこういう物語って好きなんで、大プッシュさせて頂きます

鈴木さんはここを見て欲しい

劇伴

そしてこの作品の凄い所はなんと言っても『劇伴』。

『ヤマト』が売れちゃったから付いた悪しき習慣「作品中、殆ど劇伴が掛かってる」ってのが無いんです。

第一話で初めて劇伴が流れるのが、最初のキーマンである『問川』が怪獣に襲われ、主人公『響裕太』が戦う決意を固める場面で、物語が始まってから16分が経過した頃。

二話以降も無駄な劇伴は無く、効果的なシーンにしか使われなくて、後は環境音メイン。ここぞって時に劇伴が鳴る。だから芝居の間がハッキリして物語に奥行きが出てくるんです。ホントに使い方が上手い。

重力

『SSSS.GRIDMAN』は、円谷プロの『電光超人グリッドマン』が原作で、ウルトラシリーズや他の特撮作品へのオマージュが沢山描かれています。特に怪獣は着ぐるみの動きが見事に再現されていて、これCGだよね? って思うレベル。
そして自分的に感心したのが重力。ちゃんと重さや重力が表現されてるんです。
解りやすいシーンがあります。グリッドマンが初めて登場した怪獣『グールギラス』へ空中からキックした時(ライダーキックのようなイメージ)、当たってる足裏を軸にして、身体が落ちていくんです。普通アニメだと、カッコよく突き抜けたり、相手が吹っ飛んだりするんですが、こういう所もしっかり着ぐるみの戦闘を再現してるし、リアル感があります。

まとめ

自分で創った登場人物に救われる。って言うのは、心の中にある感情、つまり自分自身に救われるって話なんです。

弱い自分を救えるのは自分自身しか無い訳で、それを担うのが、アカネ自ら特別な存在って告げた六花がキーマンになった『グリッドマン同盟』なんですよ。

だから特撮アニメとして楽しむならアリだけど、精神世界を描いた話や心の葛藤を中心としたストーリーが苦手な人には刺さり辛いと思う。
でもヒーローものだけの話って考えると物足りなさもあるんだよね。
だからこの『SSSS.GRIDMAN』は、新条アカネが自らの心を救を救う物語って視点で見ないと勿体無いんです。

そしてそう思って見ていれば、『劇場総集編 SSSS.GRIDMAN』の特典で配られたこのイラストカードにあるアカネの表情にグッと感じるものありませんか?

Copyright©「GRIDMAN」製作委員会
劇場総集編 入場特典イラストカード

Copyright©「GRIDMAN」製作委員会
劇場総集編 入場特典イラストカード



まあ、アカネの指の形が次作の『SSSS.DYNAZENON』で「怪獣優成思想」の「インスタンスドミネーション」のポーズなのは気になる部分ではありますが……。いや、解ってるよ。「武士は食わねど高笑い」の時とか、バルタン星人だってのはさ。でも、次作でSSSSシリーズが絡むとなるとやっぱねー。

さて、続編になる『グリッドマン・ユニバース』では今の時点でクレジットはされていないけど、出るとしたら、どういう関わり方をするのかな?

※本音は出て欲しくはないけど

公式サイト

そして物語は、同じ世界観で描かれる『 SSSS,DYNAZENON 』へ。

それでは今回はこの辺で。
またお会い出来るのを楽しみにしています。

鈴木さんでした。

「 SSSS,GRIDMAN 」は各配信サイトで配信中&ブルーレイ&DVD発売中です。

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本ページの情報は2023年2月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXT、各配信サイトでサイトにて ご確認ください。
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キャスト

響裕太 広瀬裕也
グリッドマン 緑川光
内海翔 斉藤壮馬
宝田六花 宮本芽衣
新条アカネ 上田麗奈
サムライ・キャリバー 高橋良輔
マックス 小西克幸
ボラー 悠木碧
ヴィット 松風雅也
アンチ/グリッドナイト 鈴村健一
アレクシス・ケリヴ 稲田徹

スタッフ

原作 『電光超人グリッドマン』
監督 雨宮哲
脚本 長谷川圭一
キャラクターデザイン 坂本勝
音楽 鷺巣詩郎
アニメーション制作 TRIGGER
制作 「GRIDMAN 製作委員会」