アカデミー作品賞『パラサイト 半地下の家族』で感じた虫唾が走るような匂い【ネタバレ感想】

パラサイト 半地下の家族

ようこそのお運び誠にありがとうございます。

さあ、本日はアジア初のアカデミー賞の作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』です。

2019年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したのを聞いて注目はしていましたが、アカデミー取りましたね。

まあ、アカデミー賞は昔から政治が凄く絡んでるんでアレですが、カンヌのパルム・ドールで純粋に凄い映画なんだろうなって思いました。

やっぱりね、長年映画ファンやってるとアカデミー賞は「ああ、今年はこういう路線でまとまったのか」みたいな感じになっちゃうんですよ。観客置いてきぼりなんだもん、アカデミー。

でも作品賞含めて4部門受賞は凄いと思います。それだけ作品にパワーがあったからでしょう。

 

この『パラサイト 半地下の家族』が作品賞を受賞後、週刊誌やらネットニュースやらワイドショーまで日本映画は韓国に抜かれた! みたいなニュースで溢れましたが、日本映画=邦画って海外あんまり意識してないですからね。日本の小さいマーケットでいかに稼ぐかみたいな作品ばかりで、たまに海外の章受賞したってニュース出てもインディーズ映画ばかり。国を挙げて作品を海外に向けて発信して商売しようって言う韓国映画に歯が立つわけありません。自分はある意味邦画、日本の映画は諦めの境地に至っております。赤字出さない為に作品や監督より先に主演が決まる世界ですよ。明るい未来なんて見えません。

しかも今は新型コロナウイルスで現場はぐちゃぐちゃで、ギャラがとんでもないレベルまで下がってるようで、いい作品を作る所じゃない状況らしいです。

もう邦画は客呼べる俳優で作品作って小金儲けて、質のいいインディーズやミニシアター系の映画に少しでも予算回して欲しいです。

 

カンヌと言えば、この『パラサイト』の前年に同じくパルムドールを受賞したのが、是枝和弘監督の『万引き家族』。現代社会への警笛ともとれるこの作品ですが、貧富の差や現代社会の問題等、描いてるテーマが似ている事もあって、『パラサイト』とよく比較されています。でも『パラサイト』はアカデミー作品賞獲ったんでしょ? じゃあ『パラサイト』の方が上なんじゃない? って結構言われたりしてますが、自分はあんまり変わらないんじゃないかなって思うんですよね。

オスカーは、本当に流れなんです。アカデミー会員の好みも大きいんですが、時代の流れや風潮に凄く左右される賞だと自分は思ってます、それに昔から観てる人間にとってハリウッドって差別と偏見と特別意識の塊ですからね。ジュディー・ガーランドやチャールズ・チャップリンへの仕打ちがいい例です。イジメですよ。

もちろんオスカーを獲るのは凄い事です。いくらヒットして『マッドマックス・怒りのデスロード』みたいに映画としての魅力に溢れてたり観る人の支持があっても、アカデミー賞にふさわしくないと会員の多くが思ったらオスカーは取れないですし、アメリカ映画界の為の賞ですから。そういう色々な事を考えると、世界三大映画祭と言われるカンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭とはやっぱり違うんですよね。『タイタニック』位に力でねじ伏せないと難しいです。まあ各賞にも傾向はありますが、コンベンションでもあり、各国のバイヤーが鎬を削る場でもありますから、ハリウッドのハリウッドの為のハリウッドの人間であるアカデミー会員の選ぶオスカーとはちょっと印象が違います。まあ、自分も中学生の頃までは「アカデミー賞スゲェ!」って思ってましたが……。

 

さて、作品の感想に戻りましょう。

お話は、韓国の下層の象徴でもある半地下に暮らす失業中の一家が、息子ギウの友人の大学生、ギジョンから頼まれた裕福な家庭の娘の家庭教師の仕事を期に、口八丁手八丁で一人、また一人とその屋敷での仕事にありついて行き、しまいには元からいる家政婦のムングァンまでも追い出し、家族全員がその屋敷に就職=寄生(パラサイト)する事に成功します。

しかし、屋敷の家族が出かけている雷雨の日に家族全員で好き放題の酒盛りをしていると、辞めさせるよう仕向けた家政婦のムングァンが訪ねてくるんです。実はムングァンは屋敷の主人らに内緒で地下室に借金取りに追われていた夫を匿っていたんです。

そこからギウ家族のパラサイト計画は波状していくのですが……。

 

ラストが途中で読めちゃうのと、お国柄だなと感じてしまった部分は残念でしたが面白かったです。

何よりも、作中で屋敷の主人であるパク氏が、運転手として採用した一家の父親から漂う体臭が、半地下に住む様な最下層の人間が発するかび臭いスメルと表現したシーンで、ああ、この映画から漂う何とも言い難い、ベッタリと纏わり付くような嫌な感じはこれなんだと感じたのは、普段感じ得ない感触でした。前述の「万引き家族」が、同じパルムドールを受賞したのにオスカーに届かなかったひとつの理由はここだったと感じています。

とにかくこの嫌な感覚は、観終わった後も暫く抜けない程でした。正にオスカーに相応しい作品です。

日本の映画は考え方を一から変えないとダメでしょうね。邦画は酷すぎる。

自分が小中学生の頃は、黒澤明が世界のクロサワと呼ばれたりしてワクワクしたものでしたが今はダメですね。もっとワクワクさせるような映画が観たいです。

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