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アンソニー・ホプキンスの芝居に圧倒された「ファーザー」※ネタバレ感想

映画『ファーザー』サムネイル画像

エンドロールが終わった後、「自分はなんてものを観てしまったんだ」と呆然となり、暫く動けませんでした。

 

本日は、2021年のアカデミー賞で、アンソニー・ホプキンスが最優秀主演男優賞を受賞した『ファーザー』です。

長年映画観てると、アカデミー賞受賞! って聞いても、「は? そう、ふーん」ってくらい自分の中でも権威とか地に落ちてるハリウッドの仲良し映画賞なのですが、今回の主演男優賞の件は驚きました。生中継を観てたのですが、故チャドウィック・ボーズマンの受賞は間違いないと自分も思っていました。だって最高の賞と思う作品賞の発表をずらしてまで主演男優賞を大トリに持ってきたわけじゃないですか。それにハリウッド、アカデミー賞の流れも多様性を掲げて、これまでの白人ファーストからの脱却を目指しているので間違い無いなと。

しかし受賞したのはアンソニー・ホプキンス氏。テレビ放送も混乱し、まさかの主演男優賞のインタビューも無し。しかも後から聞いた情では、アンソニー・ホプキンス氏からリモート出演の打診があったのに断っていたそうなんです。完全にチャドウィック・ボーズマン氏の受賞で全てが動いていたんですよ。

羊たちの沈黙での演技やそのレクター博士のハンニバル三部作やチャーリー等の出演作を観ていますが、正直83歳とご高齢でもありますし、前述の件からも考えて全くのノーマークでした。受賞作の『ファーザー』も日本公開がまだでしたし。

アカデミー賞についてボヤいた『パラサイト~半地下の家族』はこちらから

しかし公開された『ファーザー』を観てみたら、もうアンソニー・ホプキンスしかいないだろって位に凄い芝居だったし、作品も素晴らしかった。

観終わった後、暫く立ち上がれなかった位です。

 

この作品、自分がそうだったように、出来れば何の知識もない状態で観て欲しいんです。

そして観終わった後にもう一度見返して欲しい。

そういう作品です。

なのでこれからネタバレ含んで作品の感想を話すので、未見の方はここでお別れしましょう。観ないよーっておっしゃる方や、むしろネタバレ歓迎って方は引き続き観ていただければ嬉しいです。

 

お話は、アンソニー・ホプキンス演じる『アンソニー(役名)』が、娘である『アン』が付けたヘルパーに暴言を浴びせて追い出した事を尋ねに父の住む家へやってくる所から始まります。

アンソニーは80歳と高齢で、痴呆の兆候も見え始め、アンは自分が遠くへ越してしまい様子を身に来れない事を告げて新しいヘルパーを雇う話をするのですが、アンソニーは聞き入れない。そしてアンの夫がアンソニーの家を乗っ取ろうとしていると感じるアンソニーはアンにその事を話すのですが……。

 

映画を観ていると、何故か同じシーンや同じセリフが繰り返されたり、登場人物が入れ替わったり、物語の進行としてはありえないシーンが続きます。自分なんかボケボケなので、アンソニーとアンの主観で進行してるのかなーって位に捉えてたんですが、どうにも不可解なシーンが多い。そしてそれがラストの男性職員の登場で全てが一気に頭の中に流れ込んできて、「あ、あのシーンはこうで、あのシーンはこう言う事なのか……」って一瞬で霧が晴れていくように全部のシーンの意味が解かったんです。

まあ、どんだけボケてんだよって言われるかもしれないですが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の様に、じわりじわりとひとつづつ意味が解って行くのと違って、一瞬で脳みそフル回転する様なアハ体験は何十年振りかに味わいました。

 

それは認知症による意識の混濁、急激に悪くなっていくアンソニーの症状を、二時間足らずのこの物語で見せてるんです。

そしてラスト。何をどうしていいか解らなくなっていくアンソニーがすがる様に呼んだ「ママ……」と言う言葉。

ああ、そうなんだ……。もう何も解らないんだね。

 

赤ちゃんが泣く理由って、自分の気持ちが相手に伝わらないって言う理由もありますよね。アンソニーも自分の言う事が娘に伝わらなかったり理解してもらえなくて怒るんです。生まれたばかりの赤ん坊と認知症になって記憶が無くなっていく高齢の男性。そんな事をふと思い、観ていてやり切れなかったです。

 

ボケボケしていると言いましたが、アンソニー・ホプキンスやアンを演じたオリヴィエ・コールマンの演技やストーリー、演出やカメラワークに飲み込まれて、映画を観ている自分を忘れる位に入り込んでしまったんだと思います。特にアンソニー・ホプキンスの芝居は凄かったんです。こんな芝居が出来るんだって位に。

これから迎えるであろう自らの老いと、歩んでいく道程をを思い、この作品と出会えた事を感謝します。

公式サイト

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