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映画で考える福島原発事故【後編】Fukushima50を観た後に観て欲しい「太陽の蓋」【レビュー】

常磐自動車道、放射線量を示す電光掲示板(2.2マイクロシーベルト)

この前twitterにFukushima50を観てもらいたいというtweetを載せた所、自分にしては大きい反響を頂きました。

「フクシマ50は政府や東電の良いように描いた作品とか色々言われているけど、あの時福島第一原子力発電所で日本の1/3が住めなくなる大惨事を食い止めた人達は事実なんです。それを観て欲しいんです」(原文まま)

ちょっと訂正

「日本の1/3が住めなくなる大惨事を食い止めた人達は事実なんです」

「日本の1/3が住めなくなる大惨事を食い止めた人達がいるという事は事実なんです

ですね。よく考えてツィートしないとダメですね、すいません。

 

ツィートにあるように、Fukushima50の評価は賛否両論です。

否定する方の多くは「事実の改変」に問題があり、それが事実だと誤認してしまうではないか。そして彼らを英雄視する事によって、責任の所在をぼやかす狙いがあるのではないかという方が多いです。

特に当時の総理大臣である菅直人氏の描写や、総理が現場を視察しに来る事によって福島第一原発一号機の圧力を逃す為のベントが遅れたように受け取れる描写は、印象操作ではないかと言われる原因の一つでしょう。

でも、作品として多くの方に届ける為にはヒットしなければならないと思うんです。

この辺りは渡辺謙さんのインタビューでも詳しく語られています。

>「ポジティブすぎる言い方に聞こえてしまうかもしれません。でも、僕はこのタイミングで改めてあの時、福島で何が起きていたのかを伝え、賛否を巻き起こすことに意味がある、そう考えました」

>「この事故によって得たはずの教訓がなかったことになるくらいならば、賛否を巻き起こした方が良いと思うんです」

>「フィクションというフレームの中で、色々な人々の人生や思い、苦しみを描いて届けることで、初めてこの出来事の深さや怖さをしっかりと伝えられるんじゃないかな」

※Buzz Feed News 千葉雄登さんの記事(https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/ken-watanabe-fukushima-50)より引用

過去にあった歴史や事件、著名人を描いた作品では暫し事実か創作、フィクションかが話題になります。

日本でも大ヒットとなった「ボヘミアン・ラプソディ」や、フェイスブック設立者であるマーク・ザッカーバーグがフェイスブックを設立した話を題材にした「ソーシャル・ネットワーク」も公開された時に事実を描いていない。感動させる為に事実を湾曲して描いていると批判を浴びました。

 

事実をそのまま描くんだったらドキュメンタリーとして制作するしか無いのですが、このドキュメンタリーでもやり方によっては印象操作する事も出来ますし、話題に登ってもすぐ風化されてしまうでしょう。

でも映画、しかも大作は事ある毎にテレビで放映されますし、話題にもなりやすい。

だからと言って事実を湾曲して描く事をを全面的に肯定している訳では無いです。

この件は先程リンクを貼った「渡辺謙さんのインタビュー記事が一番自分の考えに近いです。

渡辺謙さんのインタビューを見て頂いた後にもう一つ、観て頂きたい作品があります。

「太陽の蓋」と言う作品です。

この作品は、福島第一原子力発電所で起きた事故を、国会に詰める新聞記者の視点を通して描いた作品です。

「Fukushima50」が現場で対応に当たった職員から見た話なら、この「太陽の蓋」は対応に追われた政府側から見た作品になります。

製作されたのは2016年と今回のFukushima50よりも前になります。しかし、Fukushima50ではあまり語られなかった東電が政府に情報を伝えなかった状況がしっかりと描かれ、何故菅直人首相(当時)が現場に視察に行ったのか、そして、民間企業である東京電力(太陽の蓋では「東日電力」、Fukushima50では「東都電力」と名称は変更されている)に対して、政府として命を掛けろと命令出来るのかと言う話や、東電は勿論の事、政府までも国民に真実を伝えなかった事実が描かれています。

でも、この作品も否定する方はいるんですよね。

自分は「太陽の蓋」→「Fukushima50」の順で観たんですが、両作共いい所悪い所があります。

二作観たからこそ思うのは、真実はどうなのか? 今福島は、原発はどうなっているのか? メルトダウン(炉心融解)した燃料棒はどうなっているのか? 廃炉への状況は? 原発ゼロへの取組は? 今大地震が起きたらどうなるのか? 二つの作品を観たからこそ湧いてくる感情が沢山あります。

そして二つの作品で感じた違和感や疑問に思った事を自分の手で調べて欲しいんです。

それこそがこの二作。ミニシアター系と劇場大作の両方で作品が作られた意味なんじゃないかと思うんです。

 

福島第一原子力発電所の燃料棒取り出し作業ですが、四号機が2014年12月、三号機が震災から10年後となる今年(2021年)3月にようやく全部の燃料棒が取り出されました。

一号機と二号機はまだ燃料棒の取り出し作業までは進んでおらず、早くても一号機が2027年、二号機が2024年からという状況です。つまり、まだ全然終わっていないんです。

この2作を見て頂き、今の状況に関心を持って欲しい。今年2021年2月21日、福島県沖でマグニチュード7.3の地震(福島県沖地震)が起きました。その地震で原子力発電所で水位低下があったとニュースがありました。何かあれば最悪の事態が起きないとは限らないんです。本当にまだまだ終わってはいないんです。

 

Fukushima50のエンドロール。原子力発電所が出来ていく過程の写真が流れていきます。その写真に写る方々は、これから始まる原子力発電という未来、そして地元が発展するという希望に満ち溢れたような笑顔で写っています。

しかし、その危険性を承知していた筈の専門家や政治家はこの笑顔を見て何を思うのだろう。アメリカ合衆国、HBOで作られたテレビドラマ「チェルノブイリ」で描かれた科学者の様に、己の犯した事実と向き合って欲しいと切に思うのです。

 

太陽の蓋は、フジテレビ配信サイト「FOD」にて配信中です。初めて登録される方は二週間無料になっていますので、もしよろしければ観て頂きたいと思います。

FODプレミアム

私の「Fukushima50」の感想はこちらから

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